赤いラジカセ
ラジカセをネットでポチってしまった。
赤いラジカセ。
そもそも藤井風の楽曲を、昔のラジオみたいな音で聴いてみたいと思ったのがきっかけだった。
CDから録音して、モノラルのスピーカーで聴いたらどうなるんだろう。
これ、無駄の極みである。
タイパやコスパが大事と言われるこのご時世に。
サブスクで聴けるじゃん。
ノンノン。
スマホでいいじゃん。
ノンノン。
そんな気持ちでポチッたラジカセの開封の儀。
段ボールから取り出した瞬間、ちょっとワクワクした。
ほんと、アナログ。
ボタンを押す。
音量を上げる。
下げる。
どこを触ればいいのか一目でわかる。
カセットテープを入れてみる。
最初の透明な部分は音が入らないから、少しだけ回しておく。
この感覚が身についているのも、なかなか昭和だと思う。
静かな部屋でCDを回す。
なぜかラジカセの前に正座している。
これも昭和だ。
CDの音源をカセットテープに録音する。
なにやってるんだ私は。
そう思いながら、曲の終わりを待つ。
途中でラジカセを撮りたくなってスマホを向けたら、シャッター音がオンになっていて、
「あー!!」
となる。
でも、この録音中の緊張感。
ふとラジオ収録の現場を思い出した。
あとMAの現場。
ナレーターさんが収録している時。
作者が出演している時。
自分の声は入らないはずなのに、なぜか物音を立てないように気を遣ってしまう。
あの独特の空気感。
そんなことを思い出しながら、楽曲終了。
停止ボタンを押す。
ガチャッ。
巻き戻して再生。
やっぱりスマホのシャッター音が入っている。
そして思っていたほど、ラジオみたいなガサガサの音にはならなかった。
もっとかすれていて、
もっと遠くから聞こえてくるような、
そんな昭和の音を想像していたのだけれど。
やっぱり現代のラジカセなんだろうな。
それとも、元の音源が良すぎるのかもしれない。
いずれにしても、
思っていた実験結果ではなかった。
無駄な実験、終了。
でも、ラジカセを買ってよかった。
ラジオが聴けるから。
自分で曲を選ばなくていい時間。
何が流れてくるかわからない時間。
効率とは真逆だけれど、
最近はそういう時間のほうが、少し贅沢に思える。
次は何を録音しようか。
そんなことを考えている時点で、たぶん私はこの赤いラジカセを気に入っているのだと思う。